村上春樹が世界中で読まれるようになった道のりを書いた一冊。「Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち」辛島デイヴィッド著
こんにちわ。
コロンボです。
今回は、村上春樹の海外進出のきっかけから軌道に乗るまでを描いた一冊、「Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち」の紹介です。
タイトルについて
この、長くてへんてこりんなタイトルは、もちろん(おそらく)村上春樹が好きなアメリカの作家レイモンドチャンドラーの本「愛について語るときに我々の語ること」へのオマージュでしょう。
そして村上春樹自身のエッセイでも「走ることについて語るときに僕が語ること」というタイトルをつけています。
このタイトルになったのは、きっと著者辛島デイヴィッド氏のあふれんばかりの村上愛の現れなんでしょう・・・って勝手に想像しています(^-^;
このタイトルだけで、ぼくはほくそ笑むとともに、心をつかまれてしまいました(^-^;
村上春樹が海外で読まれるようになった軌跡が丁寧にかつカジュアルに書かれている
現在、世界的な作家になった村上春樹だが、これまでここまで丁寧に、またここまでのボリュームをもって彼の海外進出や海外での評価について書かれた書籍はなかったのではないでしょうか。
はじめはとっつきにくい本かも、と思ったけれど全然そんな事はなかったですね(^^)
アカデミックな感じではなく、カジュアルでフランクに書かれているのでとても読みやすく、翻訳者や編集者のインタビューなどがいっぱいで、読み進むにつれてその人たちに非常に親近感を抱くようになるんです。
彼らはみんな本を愛していて、もちろん村上春樹の作品をとても愛しているんだ、ということがよく分かります。
とっかかりは「羊をめぐる冒険」から
本格的に海外で販売するために翻訳されたのが、「羊をめぐる冒険」。
アメリカでのタイトルは「A Wild Sheep Chase」(日本のどこか柔らかいタイトルからかっこいいタイトルに変換されていますね)
「羊をめぐる冒険」に始まり、次は「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」。
しかし、ここでもまだパッとした結果が出ません。
翻訳や編集の問題、アメリカでの書評、そして販売で苦戦する状況などが描かれます。
そして、ターニングポイントになったのが「ねじまき鳥クロニクル」。この作品がブレイクスルーとなり、村上春樹の小説がようやく海外で決定的に認知されることになるんです。
しかしどの作品も、翻訳される時点で大幅に編集を加えられたり、作品の一部が削除されたりしていることには驚きでしたね(ここまでするんだ!!)。
でも、海外で売れる作品にするためにはそれも仕方がないことだったんでしょうね。
どちらにしても、彼が海外で(特にアメリカで)人気作家になっていく軌跡(奇跡)が、とても丁寧に書かれていてよくわかるし、同時に、海外の文学事情(アメリカにも純文学ってあるんだ)もよく分かるので、読んでいて興味が尽きませんでした(*^^*)
おわりに
村上春樹が世界中で読まれるようになったのも、いろんな周りの人の力が不可欠だったんですねぇ(´ー`) もともと村上春樹のポテンシャルが世界的であったとしてもです。
この本は、ハルキスト(村上春樹自身は春樹主義と呼んで欲しいらしいけど)には必見(必読)の一冊ではないでしょうか。
そしてもちろん、すべての村上春樹ファン(ハルキストまではいかなくても)にとっても、そしてそうでない人にも、きっと面白い本になると思います(^^)/
最後に村上春樹のインタビューでの言葉を紹介して終わろうと思います。(ちょっと長いけど(^-^;))
でも、面白いのは、僕がアメリカにいた頃、まだ僕の小説が[英語圏などで]売れない頃は、音楽なんかは翻訳がいらないから、坂本龍一とかが受け入れられていてうらやましく思ってた。でも、文章は時間がかかるけど、しっかり残る。それは翻訳の力が大きいんですね。そして、そうなるにはある程度のカサが必要なんです。だから一冊二冊売れておしまい、というのではどうしようもない。積み上げていって、それが全体として、ある種の世界として残るというのは、すごく大事なことなんです。だから、たくさん書くというのは大事なんです」
「Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち」より引用
(著者による村上春樹へのインタビュー 2018年1月24日 より)
ではまた~☕
Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち [ 辛島デイヴィッド ]
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