映画『ミスター・ノーバディ』~人生とは何かを、キュビズムのように描いた不思議で素晴らしい物語。
こんにちわ。
娘と一緒に名探偵コナンの映画、「紺青の拳(フィスト)」を見に行った時から、娘の頭の中はもうコナンとキッドばっかりになってしまっています。
コロンボです。
みなさんは、今生きている世界は実は自分が寝ている間に見ている夢の中の世界で、目を覚ましたら本当はまだ自分が赤ん坊なのだ、なんてことを考えたりはしませんでしたか? 僕は子供のころしょっちゅうそんなことを想っていました。
映画『ミスター・ノーバディ』は、少しだけそんなことを思い出させてくれる映画でした。
基本情報
- 邦題 ミスター・ノーバディ
- 原題 MR.NOBODY
- 製作 2009年 フランス、ドイツ、ベルギー、カナダ 137分
- ジャンル SF ファンタジー ドラマ
- 監督 ジャコ・ヴァン・ドルマル
- キャスト ジャレッド・レトー
ストーリー
人間が永遠に生き続ける世界で、最後の死ぬ人間であるニモ。彼の人生を記録に残すため、彼の記憶をたどるという物語だ。
しかしその人生は一筋縄では語られない。まるでキュビズムのように多面的で、かつ矛盾に満ちた人生の記憶なのである。
彼の生きてきた人生は果たしてどんなものだったのか。そしてそれは現実だったのか。様々な時制と、まるでパラレルワールドのように展開されていく彼の人生。一体どれが本当でどれが本当でないのか、あるいはすべてが本当で現実なのか。いやもしかしたら全部が虚構なのかもしれない。そんな不思議な、そして妙な魅力のある映画である。
人生とは何か? この映画を観て感じたこと。
この映画の中では、主人公ニモは、同じ時期に2人と結婚し、また1人と深い恋愛感情を抱きながら生きている。それぞれが、同じニモの物語でありながら、しかしそれぞれが別の人生なのである。いわゆるパラレルワールドのような世界なのだが、物語はそう単純でもない。時間が逆行したり、あるいはずっと未来にとんだりと、目まぐるしく展開し、節目節目で人生がまた複雑に枝分かれを繰り返していく。
そのようにして何重にもなった物語が並行して進んでいくのである。
この多重的な物語を観ながら、何故だか人生に可能性を覚えたのは僕だけだろうか? うまく言えないんですが、人生とは、現実も、また想像も、すべて等しいレベルで、人生に違いないのだ、と感じたんですね。
あるいは、この映画は、主人公が生まれる前に天使から忘却の印をつけてもらえなかった、ということから考えて(もしかしたら僕の解釈の取り違えかもしれないが)、前世や、そのまた前世の記憶をすべて残しているのかもしれないとも考えられる。
でも、そう考えるよりも、人生は多重的で矛盾に満ちている、と考える方が面白いし、この映画もそのように見る方がいいのだろうと思う。
生きていれば、切ないことばかりではあるけれど、人生は単に一面的なものではないんだ、と思えばなんだか希望と勇気と可能性を感じ取れる気がしてきたんですよね(^-^;
カート・ヴォネガット・ジュニア著「スローターハウス5」
「ミスター・ノーバディ」は、SFらしくないSF映画であるともいえる。その中では時間軸があいまいで、過去に行ったと思えばまた未来に行き、次には別の次元の世界へと変わる。しかし描かれるのはあくまで人間であり、その人生だ。
カート・ヴォネガット・ジュニアが書いたSF小説に「スローターハウス5」というのがある。この小説もSFのようでないSF小説なのであるが、、物語があらゆる時制に突然飛び移り、過去にいながら未来を知っていたり、というとても奇妙で、しかしとても面白い小説だ。
『ミスター・ノーバディ』を観ながら、ぼくは「スローターハウス5」と通じるようなものを感じずにはいられませんでしたね。
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
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ジャコ・ヴァン・ドルマル(監督)
この映画の監督、ジャコ・ヴァン・ドルマルはぼくの好きな監督のひとりです。
トト・ザ・ヒーロー
古くは1991年の彼の作品「トト・ザ・ヒーロー」。この作品を観たのはぼくが学生のころだった。内容はあまり覚えていないのだが(情けない・・・(^-^;)、でもとてもいい映画だったということだけはよく覚えています。「トト・ザ・ヒーロー」は、ジャコ・ヴァン・ドルマル氏の初の長編作品だそうだ。
これは必ずや、もう一度見なければ、という思いになりました~(´ー`)
音楽
ジャコ・ヴァン・ドルマル氏の映画でいいところに、映画中に使われる音楽があると思う。『ミスター・ノーバディ』の中に使われた「EVERYDAY」や「MISTER SANDMAN」なども非常に効果的だったと思うし、先の「トト・ザ・ヒーロー」にあった「ブン」というシャルル・トレネの歌もとても良かったと記憶していますね♪
また、『ミスター・ノーバディ』では、その編集が非常に素晴らしかったのではないか、と感じています。編集は映画のキモですが、この映画でもその編集が映画のすばらしさをさらに際立たせているんだと思います。
ジャコ・ヴァン・ドルマルのその他の代表作
ジャコ・ヴァン・ドルマル氏のその他の作品では、「神様メール」や「八日目」などが有名ですね。
2016年の神様メールは観ましたが、非常に独特のユーモアがあって、少々どぎつすぎるところもあったけど、それでも面白くて、可笑しくて、そしてとてもいい映画でした。もちろんおススメ!です!
「八日目」(1996年)についてはまだ見られてませんので、ぜひ見てみたいと思っています。
おわりに
久しぶりに映画のブログを書いたので、少し堅いものになってしまったかもしれません。
でもこの『ミスター・ノーバディ』はとてもいい映画でした。
主役の俳優、ジャレッド。レトーはどことなくジム・キャリーにも似ていますね。アメリカの俳優で、ちょっとコミカルな感じもありますが、コメディアンではないようですね。
この映画は、観る人によればもしかしたら面白くない、ということになるのかもしれません。特にSF!と思ってみたらちょっと肩透かしにあったように感じてしまうでしょう。
でもね、後半にはかなりSFチックな映像も出てくるんですよ~
『ミスター・ノーバディ』。なかなかにいい映画でしたね(^^)/
では☕