辻村深月『ツナグ 』を読んだ~とてもよくできた話ではあるんだけれど
こんばんわ。
今朝はひどい寝不足だったのに、通勤電車ではまるで寝ることができませんでした。
コロンボです。
今回は、辻村深月の『ツナグ』を読んだ。
辻村深月は、2004年にデビューした若手の女性作家だ。若手といっても、多作で、すでにかなりの本を出してる作家だ。
考えてみれば、ぼくは昔から比較的男性作家の本をよく読んでいて、女性の作家はあまり読んでこなかった。
そんな中で、女性作家でいいなと思ったのが、最近では川上未映子とか、よしもとばなな(最近読み直して改めていいな、と感じた)くらいですかね。
そうそう、かなり昔に読んだ、向田邦子の「あ・うん」も良かった。
今回、辻村深月を手にとったのは、2018年の本屋大賞に彼女の『かがみの孤城』が選ばれて興味を持ったからだ。
なら、なんで受賞作の『かがみの孤城』を買わなかったのか、ということになるのだが、それはぼくがひねくれ者だから、というわけではなく、その時は受賞作がどれかを知らなかったからだ。
とりあえず話題の作家なので読んでみようと思った。
本屋の本棚には、本屋大賞関連本ということで彼女の本がいっぱい平積みにされていたのだけれど、本の帯の文句につられて、つい『ツナグ』を買ってしまった。
『ツナグ』の本の帯にはこう書いてあった。
【祝 本屋大賞 辻村深月を読むならまずコレ!】と。
そもそも、本との出会いとは得てしてこういう偶然とかひらめきとか直感のようなものかもしれない。
読みたいなと思っていた本の、そのすぐ横に置かれていた見知らぬ作家の本を思わず買ってしまい、それがとても自分にとって大切な本になるということもある。
もちろん逆もあるけどね。というか、逆の方が多いかもしれないけれど、でもそれはそれで楽しかったりもする。
帯には書いているいい文言は基本話半分だと思っているので、なんとなく胡散臭いなと思いつつ、これも出会いだと買うことにした。
一言あらすじ
一生に一度だけ、亡くなった人との再会をかなえる「使者」と、その依頼者との物語。オムニバスのような造りで構成された長編小説。
この本に書かれているものは、亡くなった者と、生きている者との物語だ。生きているものは、多かれ少なかれ、この世を去ったものに対する責任を負っている。それを背負いながら、人はどう生きていくべきなのか、を問う小説だ。
それをファンタジーの要素を取り込んで描いている。
5つの短編で綴られた一連のストーリーなのだが、感想としては、とてもよくできた作品だ、ということだ。
5つのストーリーが、見事にまとめられて一つの作品に昇華されている。
例えて言うなら、非常によくできたコース料理、といった感じだろうか(わかりにくいかな?)。
物語の仕掛けや構成が実にしっかりと組み立てられており、思うに、作者は事前に綿密に計画と構想を練ったうえでこの作品を書いていったのだろう。
だが、なぜかそこがぼくの好みに少し合わなかったような気がするのだ。
初めに組み立てた骨組みの中に、その登場人物やストーリーをパズルのピースのようにぴったりとはめ込んで完成させたような作品、というふうに思えてしまったのだ。
そして、ストーリーには最後まで一つの謎が残されたまま進んでいくのだが、その謎の扱いも、どこか納得のいかない所というか、もったいぶりすぎやしないか、と感じてしまったのだ。
この感覚は、恩田陸の『夜のピクニック』を読んだときにも感じたことだ。
恩田陸も去年『蜜蜂と遠雷』で本屋大賞を受賞しているし、もしかしたらぼくの感覚は書店員の感覚とは、いや世間の感覚ともずれてしまっているのかもしれない、とも思ってしまう。
でも、なんなかや言いながらでも、この作品は面白い作品であったことは間違いない。
辻村深月は、人の感情の機微や、心の動きに関してとても鋭いものを持っているし、それを描くのがとてもうまい作家だと思う(読者の胸を苦しいくらいにザワザワさせるのだ)。
また、この作品は映画化もされたおり、それを知った時には、なるほどなと納得した。生と死をファンタジーで描き、状況設定もしっかりとしているので、映像化にはふさわしい作品だな、と感じる。
また本屋大賞に選ばれた作品は映画化の確率が高いようで、(後になってYouTubeで見たんだが)彼女も受賞の挨拶の中で『かがみの孤城』の映像化を(実写でもアニメでも)期待している的なことを述べていた。
辻村深月は多作であるし、この他にもたくさんの著書がある。
なんだか上に書いてきたことと矛盾しそうだけれど、この作品だけでなく、まだ彼女のほかの作品も読んでみたいものだ、と思う。
次は本屋大賞の『かがみの孤城』にしようかな。読んでみてよかったら、(映画化が実現されていたら)映画の方も観てみたいと思っている。
これまでいろんな小説を読んできているけれど、若い頃から年数が経過するにしたがって、小説の好みも変わってきてるよなぁ、と最近はよく思いますね。
では。
コーヒーを飲もう。